音楽部の軌跡
南高校音楽部の半世紀におよぶ歩みを、ここにご紹介します。
―――――――――――― 創部〜昭和56年 ――――――――――――
四日市南高校音楽部は、学校創立当初より活動を開始しました。昭和37年には稲葉祐三先生が南高校に赴任され、顧問に就任されました。 翌昭和38年には、のちに日本を代表する両巨頭、谷川俊太郎作詞、武満徹作曲による校歌が誕生しました。 無伴奏・混声四部という構成や、流麗で若々しいメロディは、校歌としては型破りであり、新しい学校にふさわしい作風となりました。 歌詞には「登城ヶ丘」や「伊勢湾」など、自然豊かな校地の風景や、悩み多き、また喜びに満ちた青春が描写されています。そして3番の歌詞では「炎をあげるスタックが 限りない未来を照らす」と歌われ、工業地帯に燃え盛る光が未来を輝き照らすという、まさに高度成長という時代を色濃く映し出したものでした。 |
しかし、国家繁栄の象徴であったコンビナートが、四日市ぜんそくに代表される公害問題へと発展したことを知った谷川俊太郎氏は、ある雑誌に懸念を示す文章を寄せました。その誌面の存在が南高校の教員にも知られ、学校全体による議論の結果、作詞者の意見を尊重すべきだとして、谷川氏に改訂を依頼しました。 こうして、創立20周年の節目である昭和53年に、当該個所が「心にひめた問いかけは 限りない未来をめざす」と改訂されることになりました。3番の歌詞の改訂を経ることで、ふるさとの街の忘れてはならない歴史の重みを知ることが出来、この校歌がなお一層特別な意義を帯びることになったのです。 昭和56年には、第34回全日本合唱コンクールにおいて初の全国大会出場を果たすなど、音楽部の黎明から発展へ向かう、数々の歴史が刻まれました。 |
――――――――――― 昭和57年〜平成4年 ―――――――――――
昭和57年、稲葉先生が離任され、鈴山裕厚先生が顧問に就任されました。 日々の活動では、先生の指導を中心とした練習に加え、夏期及び定期演奏会前には合宿が行われ、音楽の向上へ精力的に練習を行いました。 NHK及び全日本合唱コンクール県大会では、上位入賞の常連校となり、中部大会でも入賞を果たすなど、県下の合唱界をリードする存在となりました。 平成3年には、第44回全日本合唱コンクールにおいて2度目となる全国大会出場を果たし、 |
翌平成4年には、沖縄県で開催された第16回全国高等学校総合文化祭合唱部門の三重県代表としてステージに立ちました。 コンクールと並ぶ重要な行事として、昭和49年から続いてきた定期演奏会では、OBが賛助出演し、楽しいミュージカルから高い芸術性溢れる合唱曲まで、幅広い演目を披露することで注目を集めました。 また、入学式での校歌演奏、文化祭でのステージ発表などの校内活動や、合唱祭での演奏、三重音楽祭でのベートーヴェン「第九」に出演するなど、様々な場面で活動を展開しました。 |
――――――――――― 平成5年〜平成20年 ―――――――――――
平成7年より、音楽部は常任の合唱指導者が不在となり、OBが中心となって音楽指導にあたるようになります。コンクールではOBの指揮によって出場し、県大会金賞、中部大会進出などの成績を残しました。 この頃から、部員数が減少し、定期演奏会の中止や、コンクール出場の断念などの厳しい状況に立たされることになりましたが、顧問の先生方のご尽力と、OB会による支援、そして何より部員たちの部活動への情熱によって、音楽部は力強く活動を持続させていきました。 平成15年には、部員による手作り演奏会「春のコンサート」が開催され、ささやかながらも部員の発表及びOBとの交流の場となり、その |
後も定期演奏会に代わる新たな恒例行事として定着しつつあります。 また近年、コンクールにも再び出場するようになり、常任指揮者不在の学校としては異例の高評価をいただいており、アンサンブルコンテストでは金賞も獲得しています。 平成20年には、南高校創立50周年記念式典が挙行され、学校側の依頼により、音楽部OB会有志と現役生による合同で、恩師稲葉先生の指揮で祝賀演奏を行いました。本番には4期生から47期生までの総勢86名のOBのみなさんが集われ、南高校50年の歩みの集大成に相応しい歴史的演奏となりました。 |
―――――――――――――― 現在〜 ――――――――――――――
現在、音楽部は練習場所を音楽室から北館横練習場に移して活動しています。 時代は流れ、かつての音楽部からすれば小さくなったのかもしれません。しかしそれでも、現役生たちは心から音楽を愛し、自分たちの音楽を創りあげ、音楽を通じて仲間との絆を結んでいます。創部以来の先輩方から変わることのな |
い、この南高校音楽部の「魂」は、今に連綿と受け継がれているのです。 ここでご紹介した歴史は、決して単なる過去の栄光ではありません。今この時、登城ヶ丘の草の上に歌う現役生がいる限り、南高校音楽部の前途に、無限の可能性を示してくれています。 |
描かれた軌跡のその先に、限りない未来が在ることを願って。